2023年12月26日火曜日

【山岳医療】低体温症①概要

(青字は医療従事者向けです。)


低体温症は冬山だけでなく、夏山でも起こりうる。いかに予防するかが大切。


 【なりやすい3大要因】

①低温:気温10℃以下

② 濡れ:雨、雪、沢

③風:風速10m/s以上


 【肉体的な要因】

・体力がない

・疲労

・高齢者、小児:高齢になると体温調節機能が低下し、暑さ・寒さを感じにくくなる。

・脱水

・酒、タバコ

・持病(甲状腺機能障害、血管炎など)


【低体温症の初期症状】

・強い疲労感

・注意力散漫

・ふらつき、歩行困難

単なる疲労と思い込みやすい。

寒さを感じたら低体温症初期であることを自覚しよう。

低温、濡れ、風などの要因のある環境では低体温症も疑おう。


【進行した時の症状】

・体温31-33度:意識朦朧

・体温28-30度:意識がなくなる、呼吸・脈が弱くなる、心室細動(致死的な不整脈)が起こりやすくなる

・体温27度未満:まるで死亡しているように見える



【重症度分類】改訂スイス重症度分類

ステージ1:alert 意識清明→心停止リスク低い

ステージ2:voice 呼びかけに対して反応あり→心停止リスク中等度

ステージ3:painful 痛みを与えると反応あり→心停止リスク高度

ステージ4:unresponsive どのような刺激にも反応なし→すでに心停止している可能性あり


山中において、体温や心停止のリスクをどのように推定するか?

以前は意識レベルとシバリングの有無で分類していたが、近年、意識レベルと心停止リスクに相関があることがわかってきたため、上記分類が使用されている。


ステージ2以上はECMOでの蘇生が可能な施設への搬送を考慮する。



【対応4原則】

①食べる:熱産生するために糖質(炭水化物)を摂取する
②隔離:寒さ、雨、風から隔離。テント、ツェルトなどを使用。
③保温:これ以上体温が逃げないように衣類を着込む、濡れたウエアを脱ぐ
④加温:プラティパス湯たんぽなどで「低体温ラッピング」


【予防が大事】

・濡れないこと

衣類にこだわろう。ベースレイヤーは速乾素材やメリノウールを用いる。コットンやレーヨンはNG。濡れたら着替えよう。汗をかく前に衣類調節。


・風に当たらないこと

ウィンドブレーカーを着る。特に、濡れたウエアで風に当たると急速に体温は低下する。

風の当たらない樹林帯で汗をかき、稜線に出た時に体温が急速に下がることはよくある。

風に当たりながら行動することで通常よりも消費カロリーが増え、行動不能になることも。

休憩は風の当たらない場所で行おう。



【低体温の心肺停止・rescue collapse】

・重度の低体温症は心停止に陥りうる。

・救助開始後、寒冷環境からの隔離後に心停止に至ることもある(rescue collapse)。

 末梢循環が改善→末梢の冷たい血液が中心部へ戻り、さらなる体温低下。

 腕や脚を動かすこともrescue collapseを生じやすいため、不用意に動かさない。

 体幹を水平に保って救助する。

・心停止していても、条件が良ければ回復する可能性あり。

・雪崩遭難で2時間45分の低体温心肺停止の後に後遺症なく回復した事例あり。

・復温されるまでは諦めないこと

・心室細動であった場合は初回の除細動は行うが、2回目以降の有用性は不明。

・山中で、低体温ラッピングを解いて末梢静脈路確保することは現実的ではない。

・アドレナリンの投与の有用性も不明。

・間欠的心肺蘇生

 搬送と胸骨圧迫を同時に行うことは現実的でないため、5分間の心肺蘇生、5分間の搬送を繰り返すという「間欠的心肺蘇生」が妥当言われている。

・HOPE scoreを用いると、死亡率予測ができる。

https://www.hypothermiascore.org/


【参考文献】

金田正樹・伊藤岳『図解 山の救急法』2018

川崎吉光 『登山技術全書⑨登山医学入門』2006

日本山岳医療救助機構HP https://sangakui.jp/medical-info/cata01/medical-info-2736.html

救急医学特集『山と救急ー安全登山の本』2024.5 VOL.48 NO.5



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当ブログ内「山岳医療」関連記事の内容は個人の知識・経験の向上のためにお役立てください。

特定のノウハウや治療法を推奨するものではなく、最適解は状況により異なります。

個々の事例に対する責任は一切負いません。


【山岳医療】身分証と緊急連絡先は常に携帯しよう

今日は、保険証を持って山に入ってくださいというお話です。




山に入る時やゲレンデスキーをする際、

財布を車内に置いていく人も多いかもしれませんが、

できれば保険証などの身分証明書はポケット、ザックなどに入れて常に身につけてください。



自分の経験ですが、以前スキー場のゲレンデで転倒、骨折したことがありました。

そのままパトロールの人に担架に詰められてモービルで運ばれて、パトロール室から救急車に乗り、病院へ搬送されました。



財布も全部ロッジのロッカーに入れていたので、その日の病院の支払いが全部10割自己負担でした。

付き添ってくれた仲間が立て替えてくれました。

後から手続きすればきちんと返金されますが、それなりに手間です。



お金の問題だけなら大した問題にはなりませんが、

病院で働いていると、救急車で運ばれてくる人が何の身分証も持っていなくて、

本人も意識がなくて、名前も年齢もわからない、

家族がいるのかどうかすらわからない状態で、非常に困ることがあります。



治療方針の相談もできないですし、一刻を争う事態の場合は特に困ります。

警察や消防が身元は調べてくれますが、

氏名が判明するまでや、家族に連絡がつくまで、長いと2-3日かかることもあります。

非常に困ります。




同様に、本人の氏名や生年月日はわかっても、家族に連絡がつかない場合も非常に困ります。

治療の相談ができません。




山に入る人(ゲレンデスキーヤーも!)は、意識不明で自分だけ病院に搬送されるという可能性は十分にあると思います。



身分証(特に保険証)と緊急連絡先を書いた紙は車に残置せずに身につけて山に入るようにお願いします!



(猟友会の人たちは、熊に襲われてザックを捨てて逃げる可能性も考えて、ザックに入れるではなく必ずポケットに入れておくらしいです。)





ps

いまどきは、電話番号書いた紙を所持しなくても、iphoneに優れた機能があります。

メディカルIDという機能を使うと、ロック画面からでもパスワードなしに緊急連絡先やその人の持病などを見ることができます。

将来的には、マイナ保険証のように、こういう機能が警察や消防とも連携されていくのかなとも感じます。



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2023年12月18日月曜日

出張雪崩講習会 バックカントリー仲間を助けるために必要なこと ご希望の日程で行います。 2023-24


出張雪崩講習はじめました

各地の雪崩講習会はシーズン初めに募集や開催が行われ、人数制限もあって参加できない方。仕事の都合で参加できない方。シーズン途中で始めた方だと講習会に出れないという問題があります。

その問題を解決し、皆様の安全なバックカントリーライフを支援できるように、出張雪崩講習を開始しました。

雪崩コンパニオンレスキュー訓練

雪崩講習会を定期的に、ご希望の地域と日程で行っています。


参加費:5000円(一人)

最少催行人数:なし(できるだけお仲間集めていただけると助かります)

開催日:ご希望の日程

開催日時:ご希望の日時

場所:ご希望の地域(旭川近郊、札幌近郊など。ご希望の場所で開催します)

講習時間:3~6時間程度(スムーズにいけば早く終わるもあります)

講習内容:(参加者のレベルに合わせて、必須メインに講習。余力があれば以下追加講習)

1.雪崩ビーコンダブルグループチェック ※必須

2.ビーコンサーチ ※必須

3.プロービング ※必須

4.シャベリング ※必須

5.シナリオトレーニング(雪崩発生から、サーチ、プロービング、シャベリング)※必須

6.埋没者救出後の処置方法について ※必須

7.CT(コンプレッションテスト)、弱層テスト

8.沢の穴に落ちた人の救出方法



シャベリング


CT(コンプレッションテスト)、弱層テスト



※1 講師は旭川在住のため、遠方になる場合は追加料金いただく場合がございます。


※2 人数が多くなる場合、お断りさせていただく場合がございます。サポート講師がみつけられたら開催しますが、追加料金発生となる場合があります。


※3 できるだけ少人数でも開催させていただきますが、少人数かつ遠方の場合は追加料金ををいただくか、お断りさせていただく場合がございます。


※4 参加人数が少ない場合、広く募集をかけて、参加者を集めるためにご希望の日時を変更させていただく場合がございます。


講習希望者はこちらのフォームよりお申込みください。



ご質問がある場合は以下のSNSよりご連絡ください。

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講師のプロフィールはこちらからご覧ください。


2023年12月12日火曜日

出張ビレイ講習会 リードクライミングのビレイで仲間に怪我をさせないために必要なこと ご希望の日程で行います。札幌、帯広、旭川近郊、クライミングジム

 





室内でも、外岩でもリードクライミングのビレイ技術不足が原因で起こる事故はたくさんあります。

しかし、ビレイヤーの技術不足による事故は、訓練をすれば防げます。

フリークライミングは落ちることを前提でトライをします。アルパインクライミングとはビレイの厳しさが全然違います。

クライミングはベテランから教わり、そのまま技術が伝えられますが、ベテランだから、安全ということはなく、危険なビレイをしていることがあります。その人が強いクライマーだからといって、安全なビレイをしているとは限りません。

仲間に怪我をさせないために、安全なビレイについての講習を受けて学びましょう。

そしてできれば、毎年仲間同士でシーズン初め(春)にビレイ訓練をしましょう。

皆様の安全なクライミングライフを支援できるように、出張ビレイ講習会を行います。


参加費:5000円(一人)

最少催行人数:二人(リードできる方と、ビレイヤーの最低二人でお申し込みください)

開催日:ご希望の日程

開催日時:ご希望の日時

場所:ご希望のクライミングジム、あるいは外岩(札幌、帯広、旭川どこでもいきます)

講習時間:2-6時間程度(スムーズにいけば早く終わる場合もあります)

講習内容:リードビレイにおける安全なビレイの改善指導

実際に普段やっていただいているビレイを行なっていただき、ビデオ撮影を行い、客観的にみて改善点を洗い出します。


※時間が余り余裕があってご希望があればロープワーク、クライミングの体の使い方、支点構築、マルチピッチ、クラック技術等の講習もいたします。





※1 講師は旭川在住のため、遠方になる場合は追加料金いただく場合がございます。


※2 人数が多くなる場合、お断りさせていただく場合がございます。サポート講師がみつけられたら開催しますが、追加料金発生となる場合があります。


※3 できるだけ少人数でも開催させていただきますが、少人数かつ遠方の場合は追加料金ををいただくか、お断りさせていただく場合がございます。


※4 ジムの利用料金はいただきません。


ビレイ講習希望者はこちらのフォームよりお申込みください。


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2023年12月1日金曜日

オンライン雪崩学校2024 バックカントリー開催のお知らせ、雪山登山の安全性を高めるために

 オンライン雪崩学校2024 バックカントリー開催のお知らせ、雪山登山の安全性を高めるために


目的:雪崩に関する知識を定着させ、安全性を高め、後輩に指導できるようにする。

人数:5名まで

対象者:勉強熱心、雪崩講習を多少なりとも受けている人(全く知識0の人は対象外)

料金:参加毎に2000円(途中で辞めていただいても問題ありません)。1万円の一括払いも可

開催月:12.1.2.3.4月(5か月間)

内容:


1.事前に生徒一人にテーマを与えます


2.生徒全員で予定をすり合わせてミーティング日時を時間を決めます(主に平日夜)


3.発表者はそれまでに資料を作り、ミーティングで発表をします。

※課題を与えられることによりここで成長します。資料作成などで困ること、質問があればサポートします。


4.発表後にディスカッションをして、良かった点や悪い点を出して、改善します。

※ここで改善をします


このサイクルを毎月行っていきます。


※まこちゃん講義ではないため、まこちゃんは基本的にお話ししません。みなさんに発表してもらうことをサポートします。


希望者はこちらのフォームからお申込みください。





2023年11月20日月曜日

馬追山 自然の森遊歩道コース~名水コース【北海道夏山登山ガイド】

瀞台の休憩スペース
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山:馬追山
標高:272.7m
活動距離:5.5km
高低差:584m
累積標高上り/下り 346m / 347m
往路コース:自然の森遊歩道コース
復路コース:名水コース
登り:45分
下り:45分
体力度:★☆☆
危険度:★☆☆
オススメ度:★★★☆
レベル:初級

トイレ:なし
トイレマップ:なし

登山口駐車場:自然の森遊歩道コースは3台。名水コースは10数台可能
登山口駐車場のGoogle Map:https://goo.gl/maps/Fg3n5t7bkKsVUDjX8

温泉:ながぬま温泉(600円) 
温泉URL:https://hpdsp.jp/naganuma-onsen/hot_spring

YAMAP:https://yamap.com/activities/4911023 (2019/11/02)
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 馬追山(うまおいやま)は北海道の由仁町と長沼長の間にある馬追丘陵(うまおいきゅうりょう)の中にある山で標高は275mある。実際の山頂部にはいけず、実質の山頂は瀞台(しずかだい)という場所の標高272.7mの場所になっている。
 登山の対象としては、山頂からの景色もあまりないため認知度は低い。しかし、遊歩道が整備されており自然観察をするのに最適だ。また、名水コースの登山口には「馬追の名水」が湧き出ているため水を汲みに訪れる人も多い。登山前に飲み水として組んでいくのが定番だ。
 4月の雪解け時期には早いうちに登れる山として熱心な登山者がシーズン初めに訪れることが多い。
 馬追山の北側に馬追温泉があったが2019年現在閉鎖されている。馬追山のコースは複数あり、「名水コース(と謬分岐で名水大回りコース)」、「自然の森遊歩道コース」、「旧馬追温泉コース」、の登山口が3つで、名水コースが途中で分岐し、4コースある。
 馬追丘陵には自衛隊の施設があり、林道が張り巡らされているため分岐は大変多い。標識もあるため迷うことは少ないと思うが、年のためGPSを用意したい。
 今回は「自然の森遊歩道コース」~「名水コース」に下山するコースを紹介しよう。車1台しかなくてもこのコースなら下山してからもあまり歩かない。



遊歩道入り口が登山道入り口

駐車スペース。3台が限界

遊歩道入り口

案内板もある

樹木の標識はいたるところにある

小さな沢
  

瀞台

瀞台

瀞台

瀞台の休憩スペース

ここからは名水コースを下る

途中にある林道との合流地点。林道と散策路どちらでもいける


馬追山の名物


馬追山の名物であるトンネル

上には林道があるため、下を通過する

名水コース登山口


動画はこちら


2023年11月の動画はこちら






2023年11月17日金曜日

【山岳医療】低体温症②道警山岳救助隊式プラティパス湯たんぽの作り方

 道警山岳救助隊式プラティパス湯たんぽの作り方を解説します。

プラティパス湯たんぽは低体温症に対して使用します。

低体温症の対応は以下の4原則。


【低体温症の対応4原則】


(山岳医療救助機構HP)


①食べる:熱産生するために糖質を摂取する

②隔離:寒さ、雨、風を防ぐ環境作り

③保温:これ以上体温が逃げないように衣類を着込む

④加温:プラティパス湯たんぽなど


このうち、加温の方法として、プラティパス湯たんぽは大変有用です。



【プラティパスの使い方】





①熱湯を使用。温度勾配が大きい方が早く熱が伝わるため。


②7割くらい入れたら空気をぬく。

パンパンに入れすぎて容器が丸くなってしまうと、逆に接触面積が小さくなってしまう。


③アウターシェルの上から当てる。もしくはタオルなどに包むなどしてやけどに注意。


④体幹(胸・腹)に当てる。背中はやけどになりやすいので避ける。


※容器はペットボトルよりプラティパスの方が接触面積大きくなるので加温効率がよい。



現場の状況により、使える道具や手段も変わってくるので、正解不正解というよりも、引き出しを増やしていくことも大切です。



【参考】

山岳医療救助機構HP




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2023年11月16日木曜日

【山岳医療】雪崩埋没者の心肺蘇生




【雪崩埋没者の死因】

ほとんど窒息(84%)。残りは外傷(15%)。

低体温症による心停止はまれ(1%)



【雪崩埋没者への対応の本質】

これは雪崩に限らず、どんな傷病者でも基本となる部分です。

①意識の確認

②呼吸の確認

③「意識・呼吸なし」→心肺蘇生



【雪崩埋没者に特有の留意点】

・窒息による心肺停止の可能性が高い。

・窒息による心肺停止か、低体温による心肺停止かの判断材料として、埋没時間を考慮する。

・埋没時間が60分以内であれば、窒息を疑う。

心肺蘇生の最初にまずは人工呼吸(5回)を行います。

20分以上の心肺蘇生にも反応がなければ、蘇生の見込みに乏しく、状況次第で蘇生処置中止も許容されます。

・埋没時間が60分を超えるのであれば、低体温症による心肺停止の可能性も出てくる。

呼吸や脈が非常に遅くなっていることがあるので、呼吸(と脈)の確認に最大1分間かける。

呼吸なしであれば、通常通りの心肺蘇生を継続します。

・心肺蘇生を行いながら、保温・加温も行う。

人手不足であれば、心肺蘇生が優先されます。



【key point】

・現場での混乱は必至です。

何分がカットオフ??人工呼吸何回だっけ??などと迷って対応が遅れるくらいなら、普通の心肺蘇生を救助隊が来るまで行ってください。



【救助隊へ引き継ぐこと】

・窒息の有無

口と鼻の両方が雪などで「完全に隙間なく詰まっている」のであれば「気道閉塞/窒息あり」。わずかでも隙間がある or よくわからない場合は「気道開通もしくは不明」と伝える。

(「窒息あり」の場合は回復の見込みが極めて乏しくなる。)

・雪崩発生時刻と掘り出し時刻(窒息していた時間)はその後の治療方針決定に必要な情報です。



【参考資料】

・2022 雪崩教本

山岳医療救助機構HP 

Avalanche Victim Resuscitation Checklist Revised 2023(ICAR)



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2023年11月14日火曜日

【山岳医療】心肺蘇生 〜倒れた仲間を助けられますか?〜



状況に応じた変法が色々ありますが、ここでは一番基本となる心肺蘇生を解説します。

山に限らず、日常生活上でもこの方法で行います。




【一連の流れ】

消防が提供している動画がわかりやすいです。


応急手当WEB講座





①意識の確認


倒れている人を発見したら、「大丈夫ですか?大丈夫ですか?」肩を叩きながら声をかける。

反応がなければ、次へ


②人を集める、救助要請


周りの人に救助要請を指示。周囲に人がいなければ自分で救助要請。

あればAEDも持ってきてもらう。(山小屋にはあるところも)


③呼吸(と脈)の確認


呼吸(と脈)の確認をする。

呼吸なし(、脈なし)であれば、心肺停止と判断して、心肺蘇生へ。

※脈の確認には技術が必要なので、医療従事者でなければ行わなくてよい。


④胸骨圧迫と人工呼吸


胸骨圧迫30回→人工呼吸2回が1セット。これを救助隊が到着するまで繰り返す。







【ポイント解説】

①意識の確認






②人を集める、救助要請





必ず個人を指名して依頼する。

大衆へ向けて依頼しても誰もやらない。

救助要請は110番or119番通報。

色々聞かれてしまって時間がないのに!と言う状況ならば、


基本的に、通報先には発信者の電波から取得した位置座標も伝わっている。

ジオグラフィカの現在地表示で緯度経度を伝えるのも良い。




③呼吸(と脈)の確認

10秒以内に行う。速やかに胸骨圧迫を開始するため。


呼吸の確認






「頭部後屈、顎先挙上」とうぶこうくつ、あごさききょじょう

気道確保の姿勢を作る。「頭部後屈顎先挙上」を行うことで、舌の落ち込みが改善して気道が通る。

口の中に異物が詰まっていれば取り除く。







「見て、聞いて、感じて」

傷病者の顔に自分の耳と頬を近づけることで吐く息を感じる。

目線は傷病者の胸とお腹の動きを見る。

目線を低くすることで、胸とお腹の動きが見やすくなる。


「普通の」呼吸でなければ、「呼吸なし」と判断する。


死戦期呼吸:心停止直前直後のあえぐような顔の運動。きちんと胸まで空気を吸えていないので、呼吸としては無効。これも呼吸なしと扱う。

見慣れていないとわからないので、「普通の」呼吸でない、もしくは自信がないなら「呼吸なし」と扱う。


・脈の確認 ※医療従事者のみでよい。

首の正面真ん中に気管が通っている。

そのすぐ脇の奥に3本指を縦に置いて触れる。


心肺停止の時の脈の確認は手首ではなくて首です。

頭へ血流が行っているかどうかが大切なので。


慣れていないと「ないものをない」と言うのは難しいので、医療従事者でなければ脈の確認は行わなくてよいとされています。

呼吸の確認のみ行い、「普通の」呼吸がなければ、胸骨圧迫と人工呼吸へ。


以上を10秒以内に行います。




④胸骨圧迫と人工呼吸

胸骨圧迫





速さは1分間に100-120回 ♪あんなこといいな〜できたらいいな〜

押す場所は胸の真ん中、乳頭の間

深さは少なくとも5cm。全体重かけて深く押す、完全に戻す

山では1分ごとに交代。疲れると有効な胸骨圧迫ができなくなります。


人工呼吸





頭部後屈、顎先挙上の体勢を作る。

鼻をつまんで、口を塞ぐ。約1秒かけて優しく送り込む。

軽く胸が上がるくらいにとどめる。

空気を送りすぎると、胸の圧が高くなり、心臓に返ってくる血液が減ってしまいます。

胃もパンパンになって嘔吐しやすくなります。嘔吐されると人工呼吸の継続が難しくなります。



これを30対2で行います。

声に出してカウントしながら押す!

3サイクルくらい(大体1分)を目安に交代しながら行います。




【講習会のススメ】


いくら動画を見ても、イメトレしても、

実際にどれくらいの力をかけていいのかは、体で覚える必要があります。


講習会に参加すれば、模型の人形を使って練習できます。

人形と人間も違うところはありますが、訓練としては必須です。

各地で随時開催されています。


消防


日本赤十字



今回解説したプロトコールは、

BLSプロバイダーマニュアル AHAガイドライン2020に準拠しています。






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