2024年6月12日水曜日

【山岳医療】マタニティ山行の記録ーマタニティ登山、マタニティスキー、マタニティクライミング


あくまで一個人の記録です。


妊婦の運動についてはまだわかっていないことも多く、日本においてはヨガ、スイミング、ウォーキングくらいしか推奨されていないのが実情です。


しかし、海外では、妊娠前から親しんでいる慣れたアクティビティに関しては、レベルを調整して続けることのメリットがあると言われてきているようです。


とにかく日本語での妊婦のエクササイズに関する情報があまりありません。

まして、山活動となると尚更、少数の個人の記録しか出てきません。


(なんなら、転倒の可能性のあるスキーは妊婦厳禁!というのが一般論です)


この記事は妊娠中の山活動を奨励するものではありません。

あくまで個人の責任のもとにお願いいたします。

一般的には産婦人科の医師、その他医療従事者にも推奨されないと思います。



でも、私個人としては工夫次第でなんとでも楽しめるという、その過程も含めて今しかできない良い経験になっています。

山が大好きなのに妊娠して諦めている方も多いのではないかと思い、何かしら参考になれば嬉しいです。




【大前提】

どんな医学論文でも、以下の全てが当てはまる場合のみを運動してもいい人としています。

・妊娠経過に問題がない

・双子ではない

・妊娠前の持病がない


【妊婦の運動の基本】

・転ばない(お腹をぶつけないこと)

・頑張りすぎない

・お腹が張ったらやめる

・山では何かあっても病院にすぐ行けないことを理解する


【ウエアについて】

山用のマタニティウエアは2024年現在でほとんど存在しないのが実情です。

NORTH FACEから少しだけ出ていますが、運動に適するものというよりはタウンユース(〜キャンプ場程度での使用)に近いものが多いです。

インナーやブラ、ショーツに関しては、さらに壊滅的で、山に適した性能でかつマタニティ用というものは探した限り見つかりませんでした。

どなたかご存知でしたら教えてください。

後はAdidasやNikeが少しマタニティ用スポーツウエアを出しているようですが、山用ではないですし、品揃えは決して多くありません。


後ほど書きますが、日本で入手するなら夏であればヨガウエアが快適でした。

アウター類のウエストに困るようであればサスペンダーの使用が使い勝手良いと思います。

厳冬期の場合は、よりウエアに困るかもしれません。

こちらもどなたかご経験あれば教えていただきたいです。




【私の妊娠前の経験値】

・夏山、山スキー、クライミング:全部初心者レベル

・スキー滑走:ゲレンデなら滅多に転ばないが、荒れたパウダーはまだ滑り慣れていない

・体力もない






妊娠2ヶ月目(1月)

妊娠発覚前後は、普通に山スキー、ゲレンデスキー行っていた。

その後つわりで体調不良となり、比較的体調良い日を選んで近場のスキー場巡り。

ゲレンデの整地、サイドカントリーのツリーランも少し楽しむ。


山は少しだけ行ったが、標準タイムの2倍かかったり、途中で体調悪くて撤退したり。


・行った山:東古丹別山、中愛別山 山スキー

・ウエア:妊娠前のもの使用

・気をつけたこと:絶対に転ばない、無理しない、冷やさない、時間に余裕を持つ、いつでも撤退できるようなプランにする

・感情面:これからのスキーシーズンを楽しみにしてたので正直葛藤する気持ちもありました。。





妊娠3ヶ月目(2月)

引き続きつわりで体調不良。仕事もまともに働けず。

山スキーは体力と時間を考えて非効率なので一旦やめようという話になる。

体調の良い日にゲレンデのサイドカントリー開拓を楽しむ。

1時間くらい滑走したら限界がくる。

遠いスキー場だと行き帰りの車で具合悪くなる。

基礎体温が上がっているためか、寒さがすごく堪えるようになり、防寒はしっかり。でもカイロでも具合悪くなる。


・行った山:なし

・ウエア:妊娠前のものを使用。

・気をつけたこと:絶対に転ばない、無理しない、冷やさない、時間に余裕を持つ

・感情面:つわりをいなすのに精一杯。


妊娠4ヶ月目(3月)

前半は引き続きつわりの合間見てゲレンデへ行っていたが、骨盤のわずかな変化なのか、滑りづらさ、不安定さを感じるようになり、何度かサイドカントリーで転倒したので、マタニティスキーはもう滑り納めかなと思っていた。

しかし後半になるとつわり症状がかなり軽減、気候も暖かくなったので肉体的にも楽になり、やはり滑りたい欲が出てくる。

近郊のスキー場は営業終了していたので、久々に室蘭岳へ。

登りは標準タイムの2倍かかる。滑りは骨盤の不安定さがあり、ほとんどシュテムターンで安全確実に降りてくる。

トイレがすごく近いので、行動中も我慢せずに適宜トイレタイム。

活動中心拍数上がりすぎないように(目安140以下と言われるが、自分は120以下くらいで)、適宜apple watchで確認しながらのぼる。


・行った山:室蘭岳 山スキー

・ウエア:アウターシェルのウエストが窮屈になってきたので、サスペンダー使用して前チャックを開けて使用。インナータイツや上着は妊娠前のもの使用。

・気をつけたこと:絶対に転ばない、骨盤の構造が変わっているのを感じたので基本シュテムターンで。トイレ我慢しない。心拍数あげすぎない。

・感情面:やっぱり登って滑るのが楽しい!


妊娠5ヶ月目(4月)

つわりはさらに軽減したが、動けなかった期間が長かった分体力の低下が著しい。

春スキーシーズンとなり、体力的に行ける山が限られてくる。

塩谷丸山も標準タイムの2倍かけてのぼる。

前後に引越しのバタバタもあり、少しお腹が張ってしまって反省した。

4月下旬に夏山低山も楽しめた。


・行った山:

塩谷丸山、南浅羽山→山スキー

円山→夏山登山

・ウエア:アウターシェルパンツはサスペンダー使用してチャック全開、タイツも苦しくなってきたので、マタニティヨガ用タイツを購入してインナーとして使用する。ブラは産後の授乳期にも使えるように、モンベルのジオラインフロントホックソフトブラの一回り大きいサイズを購入。

https://webshop.montbell.jp/goods/disp.php?product_id=1107249

夏用半袖Tシャツは元々ジャストサイズのものを使用していたので、ゆったりめの(マタニティ用ではない)ヨガTシャツを購入。

・気をつけたこと:絶対に転ばない、基本シュテムターン、トイレ我慢しない、夏山低山でもストック使用、心拍数あげすぎない

・感情面:体調も良くなり、思っていたより妊娠中も山を楽しめそうな予感がして嬉しかった。


妊娠6ヶ月目(5月)

体調はとても良い時期。

夏山低山にたくさんのぼる。休憩用の小さな折り畳み椅子とストック、トイレグッズ(携帯トイレ、ツェルト、ティッシュ)必携。

トイレは人が多い山や仲間といく山行であれば、ドーム型のツェルトを使用した。

気づいたらだんだんと標準タイム前後で登れるようになっていた。

お腹が張ることもあまりなし。


クライミングジムに試しに行ってみたら案外登れそうだったので外岩も挑戦。

ハーネスはチェストハーネスを追加購入してフルハーネス仕様にして使用。

お腹が徐々に大きくなり(お腹>腰)、ハーネスのウエストベルトはほとんど用をなしていなかった。

トップロープのみ、張り気味にしてもらう、リードのビレイはしない、トップロープのビレイは体重が軽いクライマーの時のみ、ジムではボルダリングよりも基本ロープでのぼる。ボルダリングは絶対に落ちないつもりでのぼる、仲間にスポットしてもらう、などが工夫・注意点。


・行った山:

三角山、五天山、磐溪山→夏山登山

石垣山→クライミング

・ウエア:夏山は前述のマタニティヨガタイツとヨガTシャツ、モンベルフロントホックブラ使用。レインウエア上、フリース、ダウン上下は妊娠前のもの使用、レインウエア下は使用せず。

・気をつけたこと:折り畳み椅子、ストック、トイレグッズ必携、チェスト/フルハーネス使用、トップロープのビレイはしない、ボルダリングよりも基本ロープで。

山活動した後は睡眠、休息をしっかりとる。

・感情面:クライミングができたことが嬉しい、クライミングは子連れでもやりやすそうだと思い、楽しみ。


妊娠7ヶ月目(6月)

基本的に体調は良いが、お腹が大きくなってきて、日常動作がしづらくなる。

仙骨の靭帯が弱くなっているのを感じる。平地でも2-3時間歩くと腰痛が出る。

骨盤ベルトを導入する。

ネットで出てくるマタニティ骨盤体操していれば調子いい。


3週間ぶりの夏山登山として八剣山へ行ったが、3週間で体が全然変わっていることに驚いた。ハイステップ気味の登りで仙骨が割れそうになる。

クライミングジムでも高くあげた足に体重を乗せることができなくなり、勝手に足自由課題ということにして登る。


妊娠前から行なっているヨガもできないポーズ、動きが出てくる。都度レベルダウンして行う。


夏山では暑さにめっきり弱くなっていることが判明。

直射日光でのぼせそうになる。うちわ持参。早朝に登るなどの工夫必要。


夜間に足をつることが増えたので、山にも芍薬甘草湯を持参。芍薬甘草湯は妊婦でも使用可。


・行った山:八剣山、朝里天狗岳、青山

・ウエア:同上

・気をつけたこと:クライミング課題のレベルを落とす、2週間以上間が空くときは思っているより体が変化しているので注意、マタニティ骨盤体操でケア、熱中症注意、睡眠しっかり、芍薬甘草湯

・感情面:少し前までできていたことが急にできなくなって悲しい。



妊娠8ヶ月目(7月)

8ヶ月に入った頃から急に体が重くなり、クライミングジムでは手も足も自由で適当に登るしかなくなる。その1週間後くらいにはそれでも辛いと感じるようになり、クライミングジム活動も一旦納める。最終的にハーネスのウエストベルトもキツくなった。

塩谷丸山はダブルストック使用で標準の1.2倍ほどかけて登る。
山行中も仙腸関節痛はあったが、帰宅して一度休んだらまともに立てないほど骨盤がグラグラになってしまう。
回復に数日要する。(回復後の日常生活での腰痛はほとんどなし)
夏山も登り納めが見えてくる。最後はロープウェイ使って藻岩山?
妊娠前と比べて虫刺され(ただの蚊でも)が重症化しやすい印象。

登山の代わりに近所の平地散歩をしたが、暑い日はもっぱら具合悪くなるので熱中症対策必須。

マタニティプールも初挑戦したが、元々ほとんど泳げないし、すごく久しぶりなので水の恐怖心の方が勝ってしまい、泳がずにウォーキングで終了。腰が弱っているタイミングだと水中ウォーキングやバタ足でも腰に負担がかかるのを感じる。水の冷たさにも弱くなった。

・行った山:塩谷丸山、あとは散歩とプール

・ウエア:同上

気をつけたこと:ダブルストック必須。山行後の骨盤ケアしっかり、熱中症注意、睡眠しっかり、芍薬甘草湯

・感情面:肉体面だけでなくて気持ちも色々億劫になり、アクティブに活動する気力なし。



(随時追記予定)


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特定のノウハウや治療法を推奨するものではなく、最適解は状況により異なります。

個々の事例に対する責任は一切負いません。

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