2025年11月2日日曜日

市街地でも出没⁉ クマ被害を暮らしの場で防ぐ5つのポイント

 街にクマが来る時代。私たちにできる日常のヒグマ対策




近年、北海道を中心に「住宅街や公園にクマが出た」というニュースが相次いでいます。

山のドングリやナラの実が不作の年には、ヒグマが食べ物を求めて街の近くまでやってくることがあります。

「山に行かないから関係ない」と思っていませんか?
実は、もう“クマは山の動物”ではなくなりつつあるのです。

この記事では、以前紹介した
👉 熊鈴の効果 クマよけ鈴は携行してはいけません
をヒントにしながら、市街地や住宅地でのクマ対策をわかりやすくまとめました。
日々の暮らしの中でできることを一緒に考えていきましょう。


1.なぜクマが街に下りてくるのか

山の実が少ない年には、クマの活動範囲が一気に広がります。
それに加えて、人の食べ物の味を覚えてしまった“人慣れクマ”も増えています。


▲住宅街の裏山で見つかったヒグマの足跡。雪の上にくっきり残っていた。

住宅地周辺では、放置された果樹、庭の生ゴミ、茂った藪や川沿いの道などが
“クマの通り道”になってしまうことがあります。
つまり、人の暮らしが気づかないうちに「餌場」や「隠れ場」を提供しているケースもあるのです。


2.暮らしの中でできるクマ対策5つのポイント

(1)ゴミと食べ物の匂いを出さない

クマは100メートル先の果物の匂いも嗅ぎ取れるほど嗅覚が鋭いといわれています。
生ゴミや果物の皮は必ず密閉して、収集日の朝に出しましょう。
夜に出すと、匂いに誘われてやってくる危険があります。


▲前夜からゴミを出しておくのはNG。匂いが夜の空気に広がりやすい。

また、家庭菜園のトウモロコシや果樹(リンゴ・ブドウなど)も油断できません。
熟して落ちた実を放置すると、夜のうちにクマが食べに来ることがあります。


(2)庭や家の周りの見通しをよくする

家の裏や庭の隅に、背の高い草やササが生えていませんか?
それがクマの“身を隠す通り道”になってしまいます。


▲住宅の裏手。草刈りで見通しをよくするだけでクマの侵入リスクが減る。

見通しの悪い場所は早めに草刈りを。
果樹の枝や木の実も剪定・収穫を忘れずに行いましょう。
「手入れされていない場所」は、クマにとって“安全なルート”に見えるのです。


(3)“人の気配”を保つ

クマは基本的に人を避けますが、静まり返った住宅地や消灯した夜道では安心して入り込んでしまいます。
夜間は外灯やセンサーライトをつけ、暗い道では声を出したり、鈴を鳴らすのも効果的です。


▲外灯やセンサーライトは「ここは人の場所だ」とクマに知らせるサイン。

また、キャンプ場や物置に食料を保管する場合は、匂いが外に漏れないよう密閉しましょう。
「人の匂い+食べ物の匂い」はクマを引き寄せる最強コンボです。


(4)出会ってしまったときの行動を知る

もしクマを見かけたら、絶対に近づかない・走らない・大声を出さない
背を向けて逃げると追われることがあります。
静かにその場を離れ、クマから距離をとりましょう。


▲道路を横切るヒグマ。車内から撮影された写真だが、徒歩では絶対に近づかないこと。

安全が確保できたら、すぐに自治体や警察に通報を。
「見かけた時間」「場所」「クマの大きさ」「向かった方向」を伝えると、地域の対応につながります。


(5)地域での情報共有を大切に

自治体の「クマ出没マップ」や防災アプリを活用して、出没情報をチェックしましょう。
また、近所で「この辺でクマが出たらしい」と聞いたら、
家族や友人、職場にも早めに伝えておくことが大切です。


▲自治体の掲示板やLINEグループで情報共有を。早めの警戒が命を守る。

地域ぐるみで「見回り」や「電気柵の設置」を進めている自治体もあります。
一軒だけの努力では限界があります。
地域全体で「クマを寄せ付けない街づくり」を進めることが、長期的な安全につながります。


3.登山の知恵を街でも活かす

以前の記事で「熊鈴よりもホイッスルや声で人の存在を知らせるのが効果的」と書きましたが、
この考え方は市街地でも通用します。


▲登山中だけでなく、住宅地でも“人の存在を知らせる”工夫は有効。

たとえば、夜道を歩くときに軽く鼻歌を歌う、子どもと話しながら帰る、
それだけでも“音で知らせる”効果があります。
また、過信しないことも大切です。
どんな対策も完璧ではないからこそ、「出会ったらどう動くか」を家族で話しておく習慣を持ちましょう。


4.まとめ 〜山と街、それぞれの距離を保つために

クマが悪いわけではありません。
彼らはただ、生きるために食べ物を探しているだけです。


▲本来の居場所は山の中。人との距離を保つことが“共存”への第一歩。

だからこそ、人の暮らしの中に入らせない環境をつくることが、
クマにとっても、人にとっても幸せなことだと思います。

小さな工夫——
ゴミの管理、草刈り、外灯、情報共有。
これらの積み重ねが、地域の安全を守る大きな力になります。

今日から、あなたの家の周りでも少しだけ意識してみてください。
その一歩が、クマとの平和な距離を守ることにつながります。


🟫 関連リンク
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北海道:ヒグマに出会わないために
札幌市:市街地でのクマ対策方針